【2028年3月31日】ずっと分けていない遺産はありませんか|「介護をした」「生前にもらった」が言えなくなります

「父が亡くなったのは、もうずいぶん前です。相続の話は、なんとなくそのままになっていて」

ご相談でよくうかがう話です。とくに揉めているわけではない。ただ、誰も切り出さないまま何年も経ってしまった——そういうご家族はとても多いです。

その「そのまま」に、いま一つの区切りの日が近づいています。2028年3月31日です。

まず、誤解を解いておきます

この話、ネット上では「2028年3月31日までに遺産分割をしないといけない」と書かれていることがありますが、それは正確ではありません。

その日を過ぎても、遺産分割の話し合いはできます。相続人全員が納得すれば、どんな分け方でも構いません。期限を過ぎたら分けられなくなる、という制度ではないのです。

変わるのは、「言い分」が通るかどうかです。

10年を過ぎると言えなくなること

2023年4月1日に施行された改正民法(904条の3)で、こういうルールができました。

相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割は、原則として法定相続分で分ける。寄与分特別受益を考慮した取り分は主張できない。

言葉が固いので、実際の言い分に置き換えます。

よくある言い分 法律上の呼び名
「私は10年間、父の介護をしてきた。その分は多めにもらいたい」 寄与分
「兄は家を建てるとき、父から1,000万円もらっている。その分は差し引くべきだ」 特別受益

この2つが、相続開始から10年を過ぎると、原則として通らなくなります。介護をした人も、生前に多く受け取った人も、みんな一律に法定相続分。ずっと親元にいて面倒をみてきた方ほど、影響が大きい話です。

もう一つ大事なのは、この制限がはたらくのは家庭裁判所の手続きの場面だということです。相続人どうしで「介護してくれたお姉さんに多めに」と合意できるなら、10年を過ぎていてもそう分けられます。困るのは、話がまとまらず、調停や審判で決めてもらうことになったとき。そのときには、もう介護の話を持ち出せません。

つまり、10年ルールは「話し合いがこじれたときの逃げ道が閉じる」期限だとお考えください。

なぜ2028年なのか

2023年4月1日より前に起きた相続にも、このルールは適用されます。ただ、いきなり適用すると不意打ちになるので、5年間の猶予が置かれました。

結果として、期限は「相続開始から10年」か「2028年3月31日」の、どちらか遅いほうになります。

お亡くなりになった時期 10年後 実際の期限
2010年ごろ(すでに10年経過) 2020年 2028年3月31日
2016年ごろ 2026年 2028年3月31日
2020年ごろ 2030年 2030年ごろ
2023年4月以降 それぞれ10年後

ざっくり言えば、2018年ごろより前に起きた相続で、まだ分けていないものは、2028年3月31日が期限です。この記事を書いている2026年8月時点で、残り約1年7か月

なお、期限までに家庭裁判所へ遺産分割を求めていた場合など、いくつか例外もあります。ご事情によっては当てはまることがありますので、あきらめる前に一度ご確認ください。

2027年3月31日の期限とセットで考えてください

もう一つ、近い期限があります。相続登記の義務化です。2024年3月31日以前の相続で不動産の名義がそのままになっている場合、2027年3月31日までに登記が必要です(→相続登記の義務化について)。

この2つは、実は同じご家庭で同時に起きます。

  • 2027年3月31日……不動産の名義を変えてください(登記の義務)
  • 2028年3月31日……分け方の言い分は、ここまでにしてください(10年ルール)

そして、登記をするには「誰が取得するか」が決まっていないといけません。順番としては、分け方を決めて遺産分割協議書を作る → 登記、です。ですから、実質的には2027年3月の登記期限に間に合わせるつもりで動けば、10年ルールのほうも自然に片づきます

いま、何をしておけばいいか

難しいことはありません。3つだけです。

  1. いつ亡くなったかを確認する——2018年より前なら、この記事の話が当てはまります
  2. 財産の一覧を作る——不動産の権利証、固定資産税の納税通知書、通帳を集めます
  3. 相続人を確定させ、分け方を決めて書面にする——ここが本番です

お身内が亡くなった直後の手続き全般は親が亡くなった直後にやること、戸籍については戸籍の広域交付についてにまとめています。江戸川区内の不動産の登記は、東京法務局 江戸川出張所(江戸川区中央1-16-2)が管轄です。

当事務所でお手伝いできること

当事務所がご相談をお受けしているのは、「どう分けるか」を決めて、書面にするところです。

  • 分け方のご相談——ご事情をうかがって、考えられる分け方と、それぞれで手続きがどうなるかをご説明します。決めるのはご家族です
  • 遺産分割協議書の作成——決まった内容を、登記にも銀行の手続きにもそのまま使える形の書面にします。当事務所の中心業務です
  • あわせて、相続人の調査(相続関係説明図の作成)財産目録の作成法定相続情報一覧図の作成と申出、預貯金・自動車の名義変更も承ります

古い相続でいちばん多い行き詰まりは、揉めごとではなく「誰も全体像を把握していない」ことです。財産の一覧と相続関係の図を先に作って、ご家族全員が同じ紙を見ている状態にするだけで、止まっていた話が動き出すことがよくあります。

「介護をした分を考えてほしい」というお気持ちがあるなら、なおさら早いほうがいいです。10年を過ぎてしまうと、ご家族に納得してもらう以外の方法がなくなるからです。

※相続人の間で争いがある場合、また家庭裁判所の調停・審判での代理は弁護士の領域です。ご相談の中でその必要が見えた場合は、早い段階で率直にお伝えします。登記は提携司法書士、相続税の申告は税理士へおつなぎします。
※戸籍の取り寄せのみを切り離したご依頼はお受けしておりません。相続関係説明図や遺産分割協議書の作成に必要な範囲で取り寄せる形になります。

おわりに

「そのうち、みんなの都合がつくときに」と思っているうちに、10年は本当にあっという間に過ぎます。

まずはご家族の戸籍と、権利証・納税通知書を探すところから。それだけなら、今日できます。

そこから先で手が止まったら、そのときにご連絡ください。「話し合いはだいたい決まっているけれど、書面にできていない」という段階でご相談いただくのが、いちばんスムーズです。


アイアグリー行政書士事務所(東京都江戸川区・葛西)

終活・遺言・相続を専門にしています。対面でのご相談を大切にしています。

  • 初回相談:4,400円(税込・60分)/ご依頼時は業務料金に充当します
  • 対応地域:江戸川区(葛西・西葛西・船堀・小岩・瑞江ほか)/江東区・市川市など近隣
  • ご相談内容:分け方のご相談・遺産分割協議書の作成・相続人調査(相続関係説明図)・法定相続情報一覧図の作成と申出・財産目録の作成・遺言書の作成・預貯金や自動車の名義変更・死後事務委任・おひとり様支援 など
  • 登記は提携司法書士、争いのある案件は弁護士、相続税は税理士へおつなぎします

お問い合わせ:03-6808-4411 / https://iagree.jp/contact

※この記事は2026年8月9日時点の制度・公表情報にもとづいています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的なご判断は専門家にご確認ください。
※参考:民法904条の3(令和3年法律第24号による改正、令和5年4月1日施行)、同改正法附則(経過措置)、法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」

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